雨宿りのテルテル坊主

PBWシルバーレインのPC、吊下骸の日記

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思いがけないことの連続

ほんのちょっと前にあった
僕の心が動揺した日。


午前零時

ホテルいちご貴族に白い影が在った
その影はホテルに住み着いたようにその存在を染み込ませて
―――――――――― 消えていった


床を何かが引きずる音、壁を何かが削る音、天井すら水浸しの空間
どうしてこうなったのか、どうして意地を張ったのか
後悔先に立たずとは、よく言うもので・・・

夜になれば照明もなく、薄暗い闇に包まれるGT
ホテル『イチゴ貴族』
そこに最近寝泊りしている能力者がいた

その能力者は小柄で、大人一人でも捻じ伏せることが出来るであろう
小手先に関しては手段を多く持つが、所詮子供であった
そして子供故に強く在りたいと願った




とある一室、ベッドがある程度清掃され能力者は眠りに就いていた
点滅を繰り返す照明、それを防ぐ影が出来る
目を開ければそこには、斧を振りかざした男が一人
薄っぺらい外見の折り畳み男だった

振り下ろされる斧より先に体をベッドの上で振り回し
ベッドの逆側へ滑り落ちるように着地する
と、同時にベッドの生地は裂け、中に詰まった水が弾け飛ぶ
扉に向かって走り、イグニッション!
・・・しかし誤算が起きた

肌身離さず持っておくべきカードは、鞄ごとゴーストの足元にあった
先程の斧を避ける際に、紐部分を掠めたのだろう
取りに行くにも隙をつかなくては・・・生身の体で
そうこうしている内に第二撃がやってきた!

斧に砕かれた扉の破片が四散する
打ち付けた体は痛み、いとも簡単に吹き飛ぶ
カーペットが剥がれ、剥き出したコンクリートの床は硬い
瞬きすら許されず、第三撃!
扉を破壊したまま器用に手元に戻した腕を鞭の様にしならせて
床に叩きつけてきた・・・無論、足を狙って
咄嗟に身を折り畳まなければ舞っていたのは
瓦礫ではなく鮮血だったかもしれない

手を軸に体を起こすも、普段とは違う体の重さについていけない
そして第四撃!
瓦礫で崩れた床の上に斧を滑らせて破片を弾いてきた
細かいとは言え、思わず上半身を守るように腕を上げた
脇腹に鈍い音が響く。第五撃

「あうっ!」
自発的ではない発声をすることで体を無意識に庇った
立って少しもしないのに、また床に頭を打ち付けた
腕を上げていたこともあって体勢すら情けない有り様だ
押し潰されそうになった肺を元に戻そうと必死に息をする
幸い、斧の刃面ではなかったのが救い
今頃、真っ二つ・・・洒落にならない
と、ここで視界の端に鞄が映る
しめた、これでどうにかなる
・・・そうした時のセオリーは大体決まっていたのだった

油断大敵・・・有名な言葉ほど、実体験が多いのだ
水たまりを避けたらトラックに撥ねられた
ゲームで勝っていい気になってたらミスして負かされた
雑魚と侮っていたらクリティカルを出された
日常的でも仮想世界でも多いことだ
この場合も、例外ではない

「あ」






・・・・・・・・*


3日前、軍艦アパート

「では、夏休みの報告はこれだけですね?」

金鈴清海(かねすず・きよみ)
彼女は忍里から来た少女のお目付け役であり、監視役である
以前、少女の両親が事故で亡くなった時も身元引受人になった立場だ

「はい!宿題も早寝早起きもラジオ体操も、歯磨きもちゃんとしました!」
「そこら辺は私の目で直にチェックしているので心配はしていません」

少女がドコに行くにも、少女が誰と会おうとも、何をしていようとも
監視している彼女。携帯を持たない代わりに出した条件でもあった
さすがは忍の出身、行動力は並大抵ではない

「夏休み中に何か内面的な変化はありましたか?」
「ないですヨ!」
元気に即答する少女の顔には微笑み以外の隙はなく
「そうですか、なら良いです」
アパート内で、他愛もない話をすることもなく
淡々と進む事務的な会話

「その割には・・・」
金鈴が一呼吸置く

「夢に戻ってきていますよ?」

思いがけない言葉、名前に少女の興味は惹かれる
夢。少女の幼い頃の子供心の名残であり、
そして今の生活において抑制している意思、そのもの。

「・・・あれ?そうでしたか?」

この自覚ある発言が二重人格と完全に言えない要因かもしれない
幼い子供故の意思が夢であり、それを否定するための少女の二つ名
自分の意思で捨て、自分の意思でつけた名前

それが揺らぎ始めていた


・・・・・・・・・・・・・・・*

午前零時半

ずぶ濡れの床で滑った、盛大に
その距離はベッドに程近く、転んだ拍子に
裂けたズタボロのベッドに突っ込んだ

ゴーストのトドメとも言うべき第六撃目が振り下ろされ
る、ことはなかった

「イグニッション!」

滑りながらも掴んだカードで愛用の武器をかざす
が、振り回す体勢も距離も整っていない・・・!
能力者は垢汚れた水を大量に吸った腕を突き出し、放った
「奥義・爆水掌!!!」
エネルギーを大量に放出する負担は腕を包み
張り巡らされた血管に熱いものが流れる感覚を呼んだ
そうして練りだされた水の爆発で体内を掻き回され
腐食した赤を纏った斧ごと、ゴーストは消えたのだった


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・*

少女は思い出す。自分が昔に戻りつつある原因を

「夏休みにいっぱい遊びすぎちゃった、かな?」

うーん、と腕を組み、顎に手を当ていかにも悩んでいる動作をする少女
どこか大げさなようでいて、その小さい体に見合った動き
楽しいこととは成長しても、その心に純粋な喜びを教えてくれる
少女はその開放感に心を許したのだろう、と自己解決しようとした

「貴方、最近色々なところでボロが出てますよ」
しかし金鈴がその「逃げ」を見逃さなかった


「家族が欲しいなら、里にかえりましょう?養子の話もありますし」
「一人が寂しいからと人に甘えないのなら、一人をやめればいい」
「貴方はまだ子供だ。大人になってから子供にはなれない」


捲くし立てるように言葉を紡ぐ金鈴
普段見たことがない彼女の熱さに少女は目を丸くする

「こ、子供なのは自覚してます!でも、ない家族を求めた覚えは
「友人を父と呼び、母と呼んだのは何故です?」

不意に、ここ数ヶ月前の記憶が蘇る
あれは確かに朝顔の思い出

「あ、あれは、ほ、ほんの例えで
「いない、とわかっている父親に昔のまじないをせがんだのは何故です?」

つい、先日の出来事が鮮明に思い出される
自分でも知らず知らずに渇望していた

「わかりましたか?貴方は決して、強くはない
 だから
「強くなれば、いいんでしょ」

少女の冷ややかな声が続きを遮った

「強くなって、心配させない」

16歳とはいえ、子供の少女が心配だった
家族を亡くし、それでも逃げずに日々を笑っている少女
その現実に耐えるため、強くなろうとする少女は
誰にも頼ろうとしない

「貴方は、どうしていつも背負い込むのです
 誰かに相談しようとしないのですか?
 ・・・いつか潰されますよ、自分に」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・*

午前壱時 ――― ホテルいちご貴族

ずぶ濡れの体を引きずり、ずぶ濡れの鞄を持って
能力者は先ほどとは少し遠い、ホテル二階の廊下抜けの部屋に辿り着いた

「はっくしょん!」

まだ夏が残っているとはいえ、夜になれば寒くなる
特にゴーストタウンであれば、気温以外の寒気が漂っていてもおかしくはない
能力者は手頃なベッドを探して軽く掃除をすると
今度はイグニッションカードを手に握り、眠りについた
・・・外からの音はしない


午前弐時、先程の恐怖心が中々治まってくれない
丸まって、いつでも動ける体勢であるにも関わらず
まるで押さえつけられているような圧迫感
・・・外からの音は

ガチャッ

         した

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  ・・・・・    ・・・   *

「金鈴さん、僕は16歳です」
先程の返答なのか、少女は相手の名前を呼び、話し始める

「16年、生きてきました・・・・・16年しか、生きていません」
少女は続ける

「そんな僕はまだまだ不安定で、誰かに頼りたい不安でいっぱいです」
それは本心で、人前では決して言わないこと

「でも、それは僕の周りの人たちも一緒です。色々な悩みを抱えています」
少なくとも、何か色々な事情が人にはある

「だから、僕だけ人に甘えるわけにはいかないんですよ」
変わらない年月を生きてきた者に、自分の16年間を押し付ける
それは少女に在ってはならない禁忌


「・・・わかりました」
頑固な少女に折れて、踵を返す金鈴
「今度会うまでに、壊れないでいてください」

強く打ちすぎた鉄はその衝撃に耐え切れなくなり、いつか脆く崩れ落ちる
強さを求めるあまり、手違いが起こることもある
仕事が減るのは有難いが、後味の悪いものになるのは御免だ
その良心で皮肉な言葉を言う。それが金鈴という人物だった

「嫌だな金鈴さん、僕は物じゃありませんヨ!」

そんな言葉の意味を知っている少女は、大丈夫、と答えた
そうして二人は別れを告げ、少女はその翌日


失踪した


・・・  ・・・・・      ・・・・・・・・・・・・・・・・・*


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  1. 2007/09/16(日) 14:50:46|
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