雨宿りのテルテル坊主

PBWシルバーレインのPC、吊下骸の日記

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とてもとても、ありがとう


とても心地よい夕暮れに、思わず目を閉じた

頬を撫でるような優しい風を感じる触覚
日差しで焼けた匂いを感じる嗅覚
静かな中呼吸と生命の息吹を感じる聴覚
閉じていても明かりを感じる視覚
その教室を包むお菓子の味を覚えた味覚

それら全てで、教室に差し込む終わりの時を感じた午後
その午後に・・・ワタシは逃げた



何時の間にか、いつもの教室で眠りについてしまった少女
みんなと二三会話した後、それぞれのやりたい事を始めた放課後
夕暮れの空がキレイで窓辺に椅子を移動して眺めていた
・・・はずだった

気が付けば、その心地良さに身を預け眠ってしまった
睡眠が欠けていたわけではない
ただ、そんな贅沢な寝も悪くない、そう思っただけ





気が付けばいつもの教室、いつもの静けさ
・・・あそこにいるのは誰だろう?
誰かが、教室の、椅子に、座っている
少女は身を起こし、椅子から滑るように降りた

その人物は紙媒体、ノートに文字を書き連ねていた
黒鉛の削れる音と、かさかさ紙が擦れる音がする
ここからでは、何を書いているかはわからない

その少女は目があまり良いとは言えず
微かな色と輪郭で周りを判別していた


かさかさと揺れる・・・あれは茶色い何か
その間から時折覗いている黒い、髪?
長身で・・・あれは知っている、良く    が着ていた
じゃぁ、この人は・・・!

少女は記憶を頼りにそれを掴んだ




「おとーさん」




それは少女の父親が良く着ていたコートに似ていた
コートの裾を掴んで、少女は眠い目を擦って呼びかける
懐かしい面影を見た

「あのね、おとーさん」

懐かしい記憶を思い出した

「きのうはおふろやさんの、おじちゃんにおまけしてもらったの」
「きょうはちゃんと、じぶんからあいさつできたよ」
「あしたは・・・」

そこで、ふと、大事なことが、少女の言葉を抑える



「おとーさん・・・撫でて」

子供の頃の、ほんの少し、強くなれる、おまじない
男の子はおかーさんに、女の子ならおとーさんに
甘えて、憧れて、安心する

今だって大事なこと
幼いあの日から忘れかけていた感覚

瞼を閉じて、頭に、手の存在を、感じる
とても心地良くて、とても大きくて、とても支えられる

「おとーさん・・・大好き」

少女は、暮れ落ちた陽の光を浴びて
瞼の重みに耐えられず、もう一度眠りについた

今日はなんて、素敵な日



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



吊下骸はこの日、夜に教室で目を覚ました

「・・・・・あれ?」

自分は放課後、いつものように
ここ、碧落教室に来て、雑談をしていた

それから?あまりの心地良さに窓辺で寝てしまった
・・・ことまでなら覚えている

「・・・うーん、僕、何してたっけ?」

少し無理な体勢で寝ていたせいか、軋んだ体を起こす
思い出す、しかし何だろう・・・思い出していいものか
頭の隅から本能なのか、それは危険だ、というような
信号が送られている気がする

夢で・・・父親に会った、いや?夢か?
現実味のある感覚を確かに五感で感じた
光を視覚が、匂いを嗅覚が、音を聴覚が、温かさを触覚が
・・・言葉の文である、味覚は使っていない

視覚に、目に、色、が残っている
茶色、黒、黒・・・赤・・・赤?
記憶の朧げな断片を、ツギハギを、縫い合わせていく
上から茶色で黒で、赤・・・赤いシャツ

今日、出会った人物の中で、赤いシャツがいたか?

・・・・・一人、いた

「あ、いや・・・でも、まさか?」

思い当たる人物は優しく、ありえると言えば、ありえる?
半信半疑、しかし可能性はそこしかない

ガタンっと勢い良く椅子を倒して、直して、教室を出る
ドアを閉めて、と、ほぼ心ココに在らず
日常の慣れた動作を繰り返しているだけ
早足で学校の玄関から靴を履き替えて閉まりかけの校門から出る
考え事を繰り返す頭に、忙しなく動く手足、息があがる

あの人の家を知らない、あの人はどう思っているのだろう
あの人は・・・・・・・・骸は悶々と悩むのを止めた
今更だ、非常に今更だ

あの人の気持ちは明日、あの人に聞けば良い
謝罪は朝一確定である

そして感謝しよう
くだらない自分の幼さに付き合ってくれた感謝を

「・・・ありがとう、菫さん」




帰り道、涼しさを纏った風が肌をかすめる中
誰もいない空に、そう呟いた

子供の頃の記憶は懐かしむものである
少なくとも、骸には、そうでなくてはならない
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  1. 2007/08/29(水) 22:44:50|
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